知り合いの結婚式にむかう。駅を降りたら式場まではあと少しなんだけどすでに5分遅刻。やべー。走ろう。
小走りで式場にむかっていると、路地裏からスッと礼服を着た男性が出てきた。
白い羽のついた黒いソフト帽を斜めにかぶっている。ルパンの次元みたいだな。なーにカッコつけてんだ。
と、その次元がこっちを向いた瞬間、俺は固まってしまった。
それは去年亡くなった親友のノブだった。
俺が唖然と立ち尽くしていると、「やべーよ、遅刻だよ、ほら、急ごうぜ」と言ってノブはタタッと走り始めた。
ちょ、ちょっと、おい、ノブ!おい!
俺は叫びながらノブを追いかけた。でも全然聞こえていないのか、ノブはこっちも振り返らずに滑るように走ってゆく。
ノブを追いかけながら俺はiPhoneを取りだしてカメラアプリを起動した。絶対に写真撮っとかないとダメな気がした。
走りながらiPhoneをノブに向けたんだけどなんかおかしい。目の前には確かに走っているノブがいるんだけど、iPhoneの画面には真っ黒な影しか映らない。
なんだこれ使えねー、全然写んねえじゃん!
目の前のノブとiPhoneを交互にみながら俺は一生懸命ノブを追いかけた。
ノブ、おい!待てって!
10秒くらい追いかけたあたりでまたおかしなことが起こった。目の前のノブが急激に縮んでゆく。iPhoneの画面に目を移すと、黒い影からホタルのような無数の光が拡散していくと共に、影もどんどん小さくなってゆく。
ああ、ノブが消える、消えちゃうよ...
ものの数秒だろうか、熱したフライパンに乗せた水が蒸発するように、ノブは目の前から姿を消した。iPhoneの画面には最後のホタルが空に飛んでいく様子が映りこんでいた。
俺はその場で泣き崩れた。
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という夢を見て目が覚めた。泣きながら目が覚めた。
ここまで鮮明な夢ってあんまり見ないから残しておこう。
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さっき久しぶりにノブのフェイスブックを開いた。
ノブの会社の人がタイムラインに半年ぶりに書き込みしていた。お客さんがお花持ってきたから君のデスクに飾ったよ、って。
だからなんだってことはないけど。でもやっぱりノブが来たのかな~とか思っちゃうよな。
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